先進的なSDGs和牛の生産システム

持続可能な和牛生産システムの構築に向けて

SDGs、環境負荷軽減効果

エコフィード(食品循環資源利用飼料)とは、食品製造副産物や余剰食品などを利用して製造されたエサのことである。

和歌山県はミカンや梅の大産地であり、同県湯浅町は醤油発祥の地として知られている。そこで、エコフィードの原材料として、県特産品であるミカンジュース・梅干・醤油などの副産物を活用している。

エコフィードの給与量が多いほど、環境負荷は軽減され、SDGs(持続可能な開発目標)に貢献できる。そのエコフィードを適正に多く与え、成長した黒毛和種牛が紀州和華牛である。なお、エコフィードの製造はエコマネジメント(株)が行っており、先進的な取組みとして評判を得ている。

専門の獣医師により、各栄養素のバランスを考慮したレシピを設計し、紀州和華牛用エコフィードの品質を安定させている

さらに、当該エコフィードは(一社)日本科学飼料協会の「エコフィード認証」を取得している。

飼育方法

大きな特徴は、エコフィードの活用である。

従来の和牛飼育では、輸入に依存する配合飼料(トウモロコシなど)を大量に使用するため環境負荷に悪影響がある。しかし、紀州和華牛の飼育では、和歌山県産エコフィードを与えることで、輸入配合飼料の約80%を削減に成功した。その要因は、獣医師がレシピと牛の健康状態を常に管理しているからである。

一般的な和牛肥育との大きな違いは、ビタミンAの制限を一切しないため欠乏症になる牛がいないこと。現在、国内では飼料中のビタミンAを減少させて和牛を肥育することが一般的である。そのため、肝炎や失明など和牛の体にとても負荷がかかる。そこで、紀州和華牛は健康で大きく伸び伸び育ち、後述のアニマルウェルフェアに準じている。

このように、母牛がエコフィードを食べて子牛を出産し、その子牛がエコフィードを食べて成長し紀州和華牛となる過程こそが、SDGs和牛と呼ばれる理由である。

地域貢献・地域資源循環

  1. エコフィード

    県内繁殖和牛農家の約9割が同社のエコフィードを利用している。 畜産分野でのエコフィード活用とは、食品製造副産物や余剰食品のアップサイクルのことであり、このSDGsな取組みは県内の食品製造会社に非常に好評である。

  2. 牛ふん堆肥

    近隣の果樹園(ミカンや梅など)や畑で多く利用され、そのミカンジュース粕がエコフィードとなる循環型農業を確立した。

産学官連携

  1. 農研機構(国⽴研究開発法⼈ 農業・⾷品産業技術総合研究機構)
  2. 近畿大学
    • 肉質分析
      • ビタミンE含有量(通常の1.7倍)
      • 各種脂肪酸の含有量
  3. 和歌山県:エコフィード給与試験など

アニマルウェルフェア

家畜のアニマルウェルフェアとは、ストレスをできる限り少なく、行動要求が満たされた、健康的な暮らしができる飼育方法をめざす畜産のあり方です。つまり、家畜の心身に負担をかけず、病気にさせないことが目標であり、世界中で脚光を浴びている考え方です。 例えば、一般的に行われているビタミンAの制限をしないため、欠乏症で体調を崩す牛はいません。また、獣医師が常駐し、病気の予防や治療を行っているだけでなく、衛生管理を徹底し牛の快適さの追求を心がけています。